大会概要

学術大会とワークショップ

参加者の方へ

フリー企画

7月19日(日)15:00 ~ 16:30 会場:北星学園大学

1.条件反射制御法の簡単レシピ~強迫症や衝動制御に手軽に使える手順の紹介~

【企画者】岡嶋 美代(千代田心療クリニック,(医)和楽会なごやメンタルクリニック)

対象:行動療法になじみのない方,条件反射制御法について難解だと感じている方を対象とする。発表者が理解している範囲内での条件反射制御法(以下,本法)の解説を行うが,理論的な解説は最小限にとどめ,臨床に応用する際に必要な行動分析の視点を参加者が持ち帰れるようにしたい。

内容:発表者は,行動を起こしたくなる衝動の興奮過程に注目させて,それに対する条件性制止(抄録なので専門用語を使うがワークショップに出た方は理解できるようになる)となるキーワード&アクション(以下,K&A)を設定するという15分でできる簡便な教示によって,本法の効果を出すことができるかを検証してきた。覚せい剤依存の臨床の中で開発された本法は,パブロフ条件づけ理論をもとにして,衝動制御と情動条件づけの消去過程を4つのステージで構築したパッケージ療法である。発表者は本法を,重症度が初診時より半減した強迫性障害患者らに応用した結果,症状の更なる改善と維持に効果があったことを条件反射法研究会で2013年に報告した。また,盗撮や盗癖行動を治したいとカウンセリングに訪れたクライエントに対して行った本法の第一ステージを用いた簡易版による2事例を行動療法コロキウムや条件反射制御法研究会で2014年に報告した。これらの発表をもとに,患者への教示の工夫や適応の選別など臨床応用のコツについて解説する。事例を紹介すると,2年前から盗撮を始め,逮捕歴(不起訴)のある事例Aと,8年前から盗癖があるがまだ公に知られていない事例Bの2つの事例に対し,条件反射制御法を簡単に教示し,K&Aの設定を毎日20回以上目標と定め,28日分の記録用紙を渡した。両者とも薬物療法は行っていない。2回目以降,事例Aは月一回25分のカウンセリングを3回(3か月)行った。事例Bは毎週12回を続け,それ以降は間隔を空けながら全20回(約1年半)25分のカウンセリングを行った。行動療法コロキウムで発表したこれらの事例をもとに,本法の教示の仕方や嘘をつくような犯罪行為の対象者との会話のコツなど,本法を使う上でのプラスアルファにも触れてみたい。また,発表者は強迫症における様々な強迫儀式の妨害に本法を使ってみた結果,本法が強迫儀式と同じ機能にならないように注意することや簡易版でも効果を出すために患者を選ぶ工夫について発表する。教示には「覚せい剤依存症者がやめられるのだから,この癖くらいはやめられる」と思わせるような言葉を使用したり,記録しやすい用紙を作った。事例A・Bともに電話とメールで発表の承諾を得た。

ページの先頭へ

2.EFT(Emotional Freedom Technique)~感情のつぼ療法~

【企画者】富田 敏也(大通公園リワークオフィス)

「EFT」はEmotional Freedom Techniqueの略です。「感情の痛み、感情の痛みに起因する心身の不調から自由になるツール」として、様々な分野で活用されています。
また、数箇所のポイントのタッピングとことばによって心身のエネルギーシステムのバランスを整えていくことから、「感情のつぼ療法」とも例えられます。

東洋の「気」の概念を応用した健康増進法はたくさんありますが、EFTの扱うエネルギーシステムとはこの「気の」流れのことを言います。そして、EFTでは感情の乱れによっておこる「気」の乱れを整えることで、落ち着いた自分を取り戻していきます。その方法はいたってシンプルです。決まった手順はあるものの必要に応じて自由に簡略化することもでき、小さなお子様からお年寄りまで気軽に試すことができます。

EFTの元になっているのはTFT(Thought Field Therapy)と呼ばれる技法です。この技法は、1960年代アメリカのロジャー・キャラハンという心理学者によって開発され大きな成果をあげてきました。
ただ専門的すぎたために、もっと多くの人がこの恩恵を受けられないか?とTFTをベースにゲアリー・クレイグは独自の研究を重ね、さらに簡素に仕上げた治療パッケージがEFTです。

EFTは心理的不調のみならず肉体的痛み・スポーツや学力能力の向上など多方面に応用されています。

日本国内では、ゲアリーから学ばれたブレンダ E.ダランパン女史が、2004年EFT-Japanを創立し普及に努めています。演者は自らの所属するメンタルクリニックでカウンセリングに取り入れ、2008年からは「うつ復職支援(リワーク)デイケア」のプログラムの一つとしても実践しています。

ページの先頭へ

3.明日から使えるナラティブ・セラピー

【企画者】坂本真佐哉(神戸松蔭女子学院大学)

ナラティヴ・セラピーは、社会構成主義心理療法の1つとして位置づけられる心理援助であり、オーストラリアのマイケル・ホワイトとニュージーランドのデイビッド・エプストンによって創始されました。

外在化する会話は、すでになじみのある方も多いことでしょう。しかし、外在化する会話は単なる技法というよりも、クライエントに敬意を払い、尊重するというナラティヴ・セラピーの姿勢を体現した方法であると言えます。言葉を変えるならば、ナラティヴ・セラピーの方法と理論は、クライエントに敬意を払うためのパッケージであるという見方もできると思うのです。

アイデンティティは、ナラティヴ・セラピーでも重要視する概念ではありますが、それは発達論的な意味合いではなく、また固定されたものではなく、他者との関わりによって生み出され、変化していくものです。またそれは、誰かから規定されるのではなく、自らの好みによって得ることのできるものなのです。

与えられた90分は、単に技法についてお伝えする時間としてではなく、ナラティヴ・セラピーの方法の中に見られる援助者の姿勢について読み解きながら、会話をどのように広げるのかについて議論を深める時間にできればと考えています。そして、90分が終わる頃に参加者が、明日から使える、使ってみようと思えたならば喜ばしい限りです。札幌でお会いできるのを楽しみにしています。

ページの先頭へ

4.スクールカウンセラーが行う授業

【企画者】中野ひろみ(札幌市教育委員会(SC))

心理・社会的な問題の発生予防に関するスクールカウンセラーのお仕事、それが心理教育。相談室だよりなどの通信発行、PTA講演や教職研修の講師、各種会議参加などがあります。

今回は、卒業を控えた小学校6年生対象の授業(45分)をご覧いただきます。いえ、模擬授業にご参加ください。

効果的な授業にするためにどんな工夫をしているか、そのためにどんなリソースをどう使っているのか。児童役または参観する保護者役としてご体験ください。

会場では、これまでに発行した相談室だよりなどのサンプルもご覧いただければと思います。

ページの先頭へ

5.やさしいトランス療法

【企画者】中島 央(医療法人横田会向陽台病院)

催眠やトランスを使った心理療法には、とかく「怪しい」というイメージが付きまといます。催眠の永い歴史の中で、その怪しさを払拭するために、様々な理論が組み立てられ、現在では、「暗示」という行為がその中核を成していると考えられています。

暗示そのものは単純な構文ですが、文脈の中で巧妙にそれを用いていくと、二重三重の構造を持たせることが可能となり、これを突き詰め、現代の催眠療法家は複雑なレトリックを操っていくことにアイデンティティを見いだしているようにもみえます。ミルトン・エリクソンなどの有名な催眠療法家の手法もその文脈で語られることが多いようです(エリクソン本人はそんなことは考えていなかったと思えますが…)。ただ、この方向性は精緻な技術を催眠療法家に要求することとなりますので、結果的に「催眠療法は難しい」「エリクソンは難解だ」というイメージが先行することになります。

僕自身もそのようなことにチャレンジしてきた時期がありますが、ブリーフ育ちのせいかすぐに飽きてしまい、「もっとシンプルにやれないものか」と色々と試行錯誤してきました。また、ずいぶん前から催眠やトランスは十分に怪しいものだと確信し開き直っています。そういうわけで、「暗示を極力意識しない」「自然に存在するトランスに目を向ける」催眠およびトランス療法(トランスを意識した治療)を心がけてきました。自然にトランスは存在するというのは、他ならぬエリクソンの言葉です。

この方法の核心は、「観察・連想・刺激」で、どこまでいってもその繰り返しです。そしてトランスが有効に働くと、暗示を駆使しなくてもクライエントの中に勝手に気づきと整理が起こります。少しコツがいりますが、エリクソンのアネクドート(お話療法)だって、変な課題だって、暗示のことなんか考えなくてもコレだけでできてしまいます。これが僕の言う「やさしいトランス療法」です。

当日は時間の関係もありますから、その「さわり」の部分をお話ししたいと思います。実演と体験もできるだけ織り交ぜることができたらと思いますので、参加者のみなさんとぜひぜひ楽しい時間にしたいと思っています。

ページの先頭へ

6.二重過程理論の臨床応用~エビデンスに基づく“行動療法”と“新世代ブリーフ”~

【企画代表者】鈴木俊太郎(信州大学)
【話題提供者】島田 英昭(信州大学)
【話題提供者】高橋 史(信州大学)
【話題提供者】鈴木俊太郎(信州大学)
【司会者】鈴木俊太郎(信州大学)

Kahneman, D.(2011)でも示されている通り、私たちは何事も合理的に判断・意思決定をしているように見えて、実は非合理的な判断・意思決定に陥っていることが多々存在します。例えば、

  • 「青年Aは昔から整理整頓好きで、部屋はピカピカ。どちらかというと内向的で、体育や運動部で活躍するというよりも文化系で、勉強が得意な方だった。」 この青年Aが成人して就いた職業は、以下のうちどれだと思いますか?

    1.営業職のサラリーマン 
    2.警察官 
    3.保育士 
    4.図書館司書(多くの人は4.図書館司書と答える)

  • 「食べる」という単語をじっと見た後、「SO□P」という穴埋め課題を見せられた時、この□に入る文字はほとんど「U」になってしまう。が、「洗う」という単語を見せられた場合、この答えは「A」になる。

私たちの思考過程には二つのシステムが存在しているとKahnemanらは主張しています。自動的で高速に働き、努力をほとんど必要としないものの自分でコントロールできている感覚はまったくない「システム1」と、複雑な思考で多くの注意資源を必要とする「システム2」がそれに該当します。

今回のフリー企画は、この「システム1」と「システム2」という思考のモデル、「二重過程理論」によって臨床実践を再記述し、新しいエビデンスで“行動療法”と“ブリーフ”を再検討、再構築しようという試みです。もちろん、再記述するだけではなく、二重過程理論を応用してセラピーの枠組みを拡げるということも意図しています。エビデンス・ベースト・ブリーフという新しい形のブリーフセラピーを、フロアーの方とも共有できれば幸いです。

ページの先頭へ