大会長あいさつ

“語り”の後の精神保健看護を語り合う ~試される未来へ向けて~

大会長 吉野 淳一(札幌医科大学 保健医療学部)

 このたび、第27回の精神保健看護学会学術集会・総会を札幌で開催することになりました。本学会は、毎回、精神保健から精神科看護にわたる広い領域の精神看護に関する多彩なテーマを討論し、学び合い、さらなる精神看護の発展を目指す場となっております。

  近年、医療、福祉、教育などの場はもちろんのこと、精神保健看護の場でも語りの力が広く認識され、見直されてきました。これらは研究においては質的研究の広まりとなり、実践の場ではナラティヴ・セラピーをはじめとするさまざまな試みを生んできました。語りの力は、ますますその影響力を増していきそうに思われます。現在は、うつ病患者の増加や薬物依存の蔓延などが危惧されていますが、時代の先行きは不透明であり、世界的な規模で人々はさまざまな危機に遭遇する世の中になりました。精神保健看護に携わる我々も、常に時代の先を読んで変化に対応できるよう備えたいものです。そこで、第27回の精神保健看護学会学術集会では大会テーマを「“語り”の後の精神保健看護を語り合う」としました。

  基調講演には聖路加国際大学の萱間真美先生をお迎えし、「精神科看護は当事者の言葉からはじまる -ストレングスモデル・質的研究における当事者の言葉のチカラ」について、また、教育講演には名古屋市立大学人間文化研究科から野村直樹先生をお迎えし、「ナラティヴとオープンダイアローグが来た道 ~ベイトソンという知の系譜」についてお話をいただきます。さらに、市民公開講座では、精神看護の知恵を災害時に生かしていただけるよう「災害時におけるメンタルケア」に関する講演を行う予定となっております。

  北海道の初夏を彩る花々と澄み渡る空の下、多数の方々にご参加いただき、これからの精神看護について議論していただけることを願っております。