大会長あいさつ

日本集団精神療法学会第35回大会
大会長 東端 憲仁
(北海道立緑ヶ丘病院)

日本集団精神療法学会第35回大会を5月の北海道で開催させていただきます。

ヒトは他者との相互的関係なしには人となりえない生き物です。その成長過程そのものが危機を伴う営みでもありますが、更なる危機に人が晒された時、相互的関係による支援のニーズは一層高まります。多発する自然災害、事故、犯罪、DV、虐待、いじめは勿論、大人の過労死ばかりでなく子どもたちにも広がる慢性的な疲労、生活格差の拡大、種々の疎外、嗜癖の危険など、様々な危機がこの社会には広がっているといえます。また、重い精神障害のある人は常に危機とともにあるともいわれます。

家族やコミュニティの相互支援力が弱体化した社会で様々な危機が広がる今、障害の有無を越えてグループを求め産み出そうとする潜在的な力が地域生活全般に亘って多様に存在し、保健医療福祉介護は勿論、子育てや教育、司法の領域等でもグループのニーズは高まりつつあり、そのニーズは対人支援の専門職自身の間にも存在します。

1968年のクラーク勧告から50年。日本も漸く収容主義的な精神科医療政策を転換し、精神障害のある人が地域で暮らすあたりまえの社会を目指すことになります。当事者を直接支援する営みとしてのグループは勿論のこと、支援者を支え、生活支援のネットワークを支える力としてもグループの果たす役割が期待されます。

社会に広く潜在する、グループを求め産み出そうとする力に、本学会がどう答えていけるか、皆さんと一堂に会して語り合えたらと思います。

大会では、浦河べてるの家での実践を始め、開明的な活動が国際的に注目されている向谷地生良さんをお招きし、『対話の力―オープンダイアローグと当事者研究が拓く世界』と題して特別講演を頂く予定です。現在準備中の企画についてもフェイスブック、ホームページ等で順次ご案内いたします。

新緑萌え風薫る5月の札幌でお待ちしております。