ごあいさつ

この度、公益社団法人日本薬剤学会 第34年会を2019年5月16日(木)〜5月18日(土)の3日間、富山にて開催されることになり、この度、年会長を拝命致しました、富山大学の細谷健一です。

第34年会のメインテーマは「薬剤・製剤における温故知新」とさせて頂きました。薬剤学は、化学物質である薬物を薬物治療に役立たせるため、安全性、安定性、有用性および実用性を具える製剤として加工する技術、さらには、より効果的な方法について研究する薬学の一分野であります。また、薬物の体内動態制御は、薬物治療上大変重要であり、薬物動態学・生物薬剤学として発展してまいりました。近年の多様化する医療ニーズを考慮しますと、iPS細胞を利用した再生医療、遺伝子治療およびワクチンや抗体を用いたガン治療にドラックデリバリ―システムを応用するなど、上記の学問について、さらなる発展・新展開が社会的に強く要求されています。

一方で、最先端の創剤を実施・実現するためには、先人の薬学における貢献を改めて顧みる必要があるとも思われます。本年会開催地の富山においては、くすりの富山として300年余の、江戸時代から配置薬を製造し全国に販売してきた歴史があります。富山での配置薬の起源は、江戸時代の第二代富山藩主、前田正甫公が江戸城内で腹痛を起こした大名に「反魂丹」を与えたところ、すぐに治ったことから、諸藩主から反魂丹を売り広めるように依頼されたことから始まっていると言われています。この、くすりの人への健康・医療における可能性を活かすという思いを基に、現在では、配置薬製造のみならずジェネリック医薬品を開発・製造する製薬会社等が多数集積しており、富山県の医薬品生産金額は、全国で1位になっています。これらの実績を有する薬都富山にて、最新の創剤を実施する上で、改めて伝統的製剤技術と医薬品開発にかける思いを回顧し、富山の伝統薬から薬剤・製剤の最前線と将来展望について議論することで、さらなる薬剤学分野における研究の進展に繋がると期待されます。薬剤学に関連する多くの専門家が集い貴重な情報交換や交流を行う機会ですので、ぜひ積極的な議論や交流を本年会で行って頂き、今後の薬剤学研究発展への原動力として頂ける場となることを念願しています。

会場として、前田正甫公も住んでいた富山城の跡地が臨める、富山国際会議場と富山市民プラザに設定させて頂きました。本年会では、一般演題の口頭、ポスターによる研究発表の他に、特別講演、招待講演、各種受賞講演、ラウンドテーブルディスカッション、企画シンポジウム、ランチョンセミナー、並びに各分野の企業展示会など、多種多様のプログラムを予定しております。充実した3日間となりますよう、アカデミアをはじめ、富山県をはじめとする製薬企業関連産業、医療現場を代表とする組織委員会各委員と共に、プログラムの構成と充実に努力してまいります。この季節の富山は、立山黒部アルペンルートにあります「雪の大谷」にて雪の回廊や、黒部ダムを楽しむ時期です。さらに、世界遺産である「五箇山合掌造り集落」にも、週末を利用して足を延ばしていただければ幸いです。

東京から富山へは、3年前に開通した北陸新幹線利用すると2時間余と、便利となりました。また、九州・北海道からは、富山空港をご利用頂くと便利です。全国から多くの方々にご参加いただき、活発な討論をいただけますことを期待し、ご挨拶とさせていただきます。

2018年6月
公益社団法人日本薬剤学会 第34年会
年会長 細谷 健一
(富山大学大学院医学薬学研究部 薬剤学研究室 教授)

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