地方創生SDGs国際フォーラム2022

開催概要

「地方創生SDGs国際フォーラム2022」が内閣府、地方創生SDGs官民連携プラットフォームの共催により、2022年1月14日(金)に開催された。

本フォーラムではSDGsの達成に向けた取組の加速化と、国内外の地域の活性化に向けた取組の拡大を目指し、会場参加(日経ホール 東京・大手町)とオンライン参加(WEB配信)を併用したハイブリット形式で開催され、国内外から約700名の参加者が視聴した。

また、国内の登壇者に加え、海外からはスウェーデン王国マルメ市副市長、駐日欧州連合代表部特命全権大使、デンマーク王国特命全権大使が登壇し、次世代の成長の原動力となる「グリーン/脱炭素」と「デジタル」を中心に、国内外における先進的な取組や目指すべき将来像などに関して、意見を交わした。

※フォーラム開催の様子は「地方創生【内閣官房・内閣府】」のYouTubeチャンネルからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/playlist?list=PL3KafRaSNhNmtgzmNlqg69zZnGb42NDqw

挨拶

野田 聖子 氏
内閣府特命担当大臣 (地方創生担当)
北橋 健治 氏
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム会長(福岡県北九州市長)

冒頭、野田 聖子 内閣府地方創生担当大臣は、「『地方創生SDGsの実現を通じた持続可能なまちづくり』を重要な政策目標として位置付けており、その実現には経済・社会・環境の三側面から統合的に施策を推進するSDGsの理念がますます重要になる」と語った。また、「本フォーラムを契機として、地域におけるSDGsの取組がさらに加速されるとともに、国内外の連携によりSDGsの推進を図ることで、日本の地方創生に繋がることを期待したい」と述べた。

また、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム会長の北橋 健治 福岡県北九州市長は、地方創生SDGs官民連携プラットフォームの6,000を超える自治体・民間企業等の会員によるマッチングや分科会等の活発な活動を評価した後、「持続可能な発展を遂げるために、一人ひとりがSDGsの視点をもってそれぞれの団体で取組を推進していただきたい」と期待を述べた。

野田 聖子 内閣府地方創生担当大臣
北橋 健治 地方創生SDGs官民連携プラットフォーム会長(福岡県北九州市長)

基調講演

村上 周三 氏
一般財団法人建築環境・省エネルギー機構 理事長
サイモン クリサンデル 氏
スウェーデン王国 マルメ市副市長

基調講演では、まず内閣府自治体SDGs推進評価・調査検討会及び地方創生SDGs金融調査・研究会の座長を務める村上 周三 一般社団法人建築環境・省エネルギー機構 理事長が登壇した。「地方創生SDGsの活動概要」「SDGs導入の促進と深化」「SDGs未来都市」「官民連携による地域経済活性化」の4つの論点を中心に、優先課題(マテリアリティ)や目標設定、進捗管理の方法や重要性を指摘し、SDGs未来都市における地域産業振興の事例を紹介した。講演の最後に、「自治体における低炭素化の取組は長い歴史・実績があるが、非常に難しい課題であり、カーボンニュートラルの実現に向けては経済・社会・環境システムのパラダイムシフトが必要であり、そのための原動力がSDGsと官民連携である」と説いた。

村上氏に続いて講演を行ったのは、スウェーデン王国マルメ市のサイモン クリサンデル 副市長。スウェーデン王国は、世界のSDGs国別ランキングでも毎年上位の国(出典:Sustainable Development Report, https://dashboards.sdgindex.org/)であり、マルメ市は欧州初のカーボンニュートラル地区を実現するなど、様々なプロジェクトを推進している。都市計画と環境を担当するクリサンデル氏は、二酸化炭素排出量の多い産業であるエネルギー分野と交通分野における排出量削減の取組や、地域ごとにテーマを設定し、環境の視点から取り組む都市計画について、現状と将来の計画を語った。

村上 周三 一般財団法人建築環境・省エネルギー機構 理事長
サイモン クリサンデル スウェーデン王国 マルメ市副市長

セッション1「地方が牽引する脱炭素社会の実現~地方創生と脱炭素の好循環に向けて~」

パネリスト

パトリシア フロア 氏
駐日欧州連合代表部特命全権大使
長谷川 雅巳 氏
一般社団法人日本経済団体連合会 環境エネルギー本部長
太田 昇 氏
岡山県真庭市長
守屋 輝彦 氏
神奈川県小田原市長
原 正樹 氏
湘南電力株式会社 代表取締役社長

ファシリテーター

村上 周三 氏
一般財団法人建築環境・省エネルギー機構 理事長

基調講演に続いては、「地方が牽引する脱炭素社会の実現~地方創生と脱炭素の好循環に向けて~」をテーマにパネルディスカッションが実施された。

村上 周三 一般財団法人建築環境・省エネルギー機構 理事長
パトリシア フロア 駐日欧州連合代表部 駐日欧州連合特命全権大使
長谷川 雅巳 一般社団法人日本経済団体連合会 環境エネルギー本部長
太田 昇 岡山県真庭市長
守屋 輝彦 神奈川県小田原市長
原 正樹 湘南電力株式会社 代表取締役社長

まず、パトリシア フロア 駐日欧州連合代表部特命全権大使から、欧州における2050年までのカーボンニュートラル達成目標、並びに2030年までに温室効果ガス排出量55%削減など気候変動対策の野心的な取組を紹介した。この欧州の目標実現に向けては、ゼロエミッション自動車化、炭素国境メカニズム(国境炭素税)、サステナブルエコノミー、EUタクソノミーなど様々な施策を展開していることを述べた。

続いて、長谷川 雅巳 一般社団法人日本経済団体連合会 環境エネルギー本部長からは、経団連は気候変動対策に主体的に取り組んできており、省エネ、エネルギーの低炭素化・脱炭素化を同時に進めていく事が重要と考えている点、また「カーボンニュートラル行動計画」を取りまとめており、2050年カーボンニュートラルに向けたビジョンの策定には、二酸化炭素排出量の多い業種ほど積極的に取り組んでいる点に言及があった。

太田 昇 岡山県真庭市長からは、真庭市の地域資源・産業である木材・木製品製造業を活かした地域電力の地産地消及び自然再生エネルギー化の目標と現在の取組について紹介した。小規模自治体のために目標達成に向けては困難な面もあるが、だからこそ地域のつながりを活かして経済・社会・環境を上手く結びつけて回す必要があり、環境への取組が地域価値を高め、地域を守ることにつながると説いた。

守屋 輝彦 神奈川県小田原市長は、再生可能エネルギーを地域資源の一つとして、地域の中で好循環を生み出し、地域を活性化していく方策や、新たな技術の地域への展開・実装に向けた官民連携の拡大への取組を紹介した。また、2050年カーボンニュートラルの実現には、市民・事業者・自治体など様々なセクターで率先して取り組み、地域の好循環を形成することが重要であると指摘した。

最後に、原 正樹 湘南電力株式会社代表取締役社長からは、地域新電力として小田原の地域事業者を中心に、脱炭素・再生エネルギーをベースにエネルギーの地産地消、地域内経済循環を実現していること、また、収益の一部を地域活性化活動に還元するスキームを構築していることを紹介した。

ディスカッションでは、「国内外における脱炭素の動向」「脱炭素を取り込んだ官民連携による地域活性化」の2点について議論され、

などの意見が交わされた。

ファシリテーターの村上氏は、「経済・社会・環境全ての点において、欧州は規制等の各種施策により取組を担保している点が先導的であり、日本も遅れないようにする必要がある。脱炭素社会は社会・経済全体の問題であり、幅広い視点・理念での推進が必要。官民連携の事例については、成果に結びつかないことも多かったが、真庭市、小田原市、湘南電力など、具体的な成功事例がでてきており、自治体のゼロカーボンシティ実現に向けて大変心強く感じた。」とセッションを締めくくった。

セッション2「地方を活性化し、世界とつながる、デジタルを活用した持続可能なまちづくり」

パネリスト

村上 敬亮 氏
デジタル庁 統括官 国民向けサービスグループ長
ピーター タクソ‐イェンセン 氏
デンマーク王国大使館 特命全権大使
宮元 陸 氏
石川県加賀市長
長谷部 周彦 氏
東日本電信電話株式会社 ビジネスイノベーション本部 地方創生推進部長
榎 崇斗 氏
taneCREATIVE株式会社 代表取締役社長

ファシリテーター

北廣 雅之 氏
内閣府地方創生推進事務局 参事官

午後の部は、「地方を活性化し、世界とつながる、デジタルを活用した持続可能なまちづくり」をテーマとしたパネルディスカッションで幕を開けた。

ピーター タクソ‐イェンセン デンマーク王国大使館 特命全権大使
村上 敬亮 デジタル庁 統括官 国民向けサービスグループ長
長谷部 周彦 東日本電信電話株式会社 ビジネスイノベーション本部 地方創生推進部長
榎 崇斗 taneCREATIVE株式会社 代表取締役社長
宮元 陸 石川県加賀市長
北廣 雅之 内閣府地方創生推進事務局 参事官

冒頭、村上 敬亮 デジタル庁統括官 国民向けサービスグループ長からは、昨年岸田内閣が打ち出したデジタル田園都市国家構想について、デジタルを使った地域の個性を活用した近代化と表した。その重要な要素としては、多様なステークホルダーが近接するためのデジタル・インフラ空間を整え、民間事業者が主体となって、自治体と協力しながら、まちのWell-Being向上などの達成目的を共有し、各事業で連携することが重要と説いた。

続いて、ピーター タクソ-イェンセン デンマーク王国特命全権大使からは、世界電子政府ランキング2020で1位(出典:国連経済社会局(UNDESA))であるデンマークでは、約20年前から将来を見据えて、デジタル戦略を国・地域・自治体で一体となって進めてきたこと、また、日本のマイナンバーと同様の制度で2000を超える公的なサービス等が、デジタルかつワンストップで利用可能であり、市民の利便性・効率的な行政サービスの向上につなげていることを語った。

宮元 陸 石川県加賀市長からは、加賀市は2014年に消滅可能性都市として指摘されたことを受け、人口増加に向けて産業構造を変化させることを目的に、人材育成・先進テクノロジーの導入を2本柱に据えてデジタル化を進めてきており、人材育成として、日本初のコンピュータークラブハウスの開設やデジタルカレッジなどの実施等の取組を紹介した。また、現在マイナンバーは市民の約70%以上に普及しており、市民への説明・合意形成を行いながら、デジタルデバイドにも配慮し、スマートシティへの取組を進めていくことに意欲を見せた。

長谷部 周彦 東日本電信電話株式会社ビジネスイノベーション本部地方創生推進部長からは、長年、NTTは地域活性化に携わっており、同社が持つ様々な資産を活用することでコスト効率・生産性の高い地域課題解決につなげていること、具体的な事例として、農業分野でのデジタル活用や、シェアスペース、デジタル人材派遣制度を活用した自治体への社員の派遣など、技術・資産・人材をシェアしながら、地域の価値創造・生産性向上を目的としたプロジェクトを推進していることを語った。

最後に、榎 崇斗 taneCREATIVE株式会社代表取締役社長は、日本海の離島、佐渡島を中心に、全国各地の仕事を行いつつ、社員は副業、趣味、子育てとの両立など自分らしい生き方・ライフワークバランスを実現していることを紹介した。また、このような取組には高い生産性が必要であり、オンライン学習や働き方なども含め社員が日本中の田舎から活躍できるモデルを構築していくと決意を語った。

パネリストからのプレゼン後は、「将来のあるべき姿とデジタル化実装へのハードルとは」「地域活性化に資するデジタル取組」の2つを論点について、ディスカッションが行われた。

などの意見が交わされた。

ファシリテーターの北廣 雅之 内閣府地方創生推進事務局参事官からは、「デジタルの強みは距離を超える事であり、柔軟に働く、地域活性化、農業などにも活用でき、マインドを変えることができる。IT人材を育てる、呼び込むには、その地域で、その人たちがしたいことが仕事にできることが重要。仕事の効率化ではなく、高い生産性が実現することが重要。」と、各パネリストの発言を振り返りつつ、「デジタルを流行だから実施するのではなく、地域課題に着目し、将来のあるべき姿を目指して、SDGsの理念および経済・社会・環境の三側面から地域の持続可能なまちづくりに生かすという視点から、官と民が連携しながら取り組むことが重要である。」と、セッション2を締めくくった。

地方創生SDGsに官民連携で取り組む優良事例の紹介

パネルディスカッションに続いて、地方創生SDGsに官民連携で取り組む優良事例が紹介された。

地方創生SDGs官民連携プラットフォームでは、SDGsを通じた地域課題の解決等に向けた官民連携による取組を募集し(昨年10月募集、71件が応募)、会員間投票と選考委員による審査を経て、以下6取組を優良事例として選定した。

◎プラットフォーム会員間連携部門(3件)

提出団体 事例タイトル カテゴリー 連携団体
KDDI株式会社 KDDIスマートドローンを活用した伊那市ドローン物流サービス 地域活性化 ・長野県伊那市
Gigi株式会社 ふるさと納税を活用して地域の飲食店を「こども食堂化」する、街ごとこども食堂プロジェクト 児童福祉 ・茨城県境町
特定非営利活動法人チャリティーサンタ 貧困家庭の抱える「子どもの体験不足」 の解消に向けた行政×NPO×企業の連携・支援ネットワーク構築事業 児童福祉 ・岡山県岡山市
・プログラム提供企業

◎一般部門(3件)

提出団体 事例タイトル カテゴリー 連携団体
株式会社キッチハイク 次の100年を創造する地域と家族の繋がりを作る『保育園留学』 地域活性化 ・北海道厚沢部町
・認定こども園ほか
株式会社サイバーレコード eスポーツでいい里づくり事業 地域活性化 ・熊本県美里町
・熊本日日新聞社 ほか
学校法人原田学園鹿児島情報高等学校 『鹿児島盛り上げ隊』 わたしたち高校生が地元の魅力をSNSで世界に発信 地域活性化 ・鹿児島県
・鹿児島市
・九州博報堂 ほか

総括

フォーラムの最後に村上 周三氏は以下のように全体を総括した。

関連イベント

地方創生SDGs国際フォーラムの開催に合わせ、3つの関連イベントが開催された。
-「自治体、企業などによる地域活性化をにらんだ大阪・関西万博の『活用法』」(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会主催)
-「消費者志向経営×地方創生」 (消費者庁主催)
-「企業版ふるさと納税について」(内閣府主催)