大会長 挨拶
第53回北海道作業療法学会学術大会
大会長 白戸 力弥
第53回北海道作業療法学会学術大会
開催にあたってのご挨拶
第53回北海道作業療法学会学術大会の大会長を拝命しました、北海道文教大学人間科学部作業療法学科の白戸力弥と申します。
本学術大会は、2023(令和5)年6月24日(土)・25日(日)の2日間を北海道文教大学(恵庭市)で開催します。北海道文教大学からの大会長は、2008年(平成20年)に千歳市で開催した第39回学術大会の深澤孝克教授以来となり、また本学のキャンパスで初めて開催できることを大変光栄に思います。
本学術大会のテーマは、「根拠に基づいた作業療法(EBOT)の再考と挑戦」としました。1965年に日本で理学療法士及び作業療法士法が制定されてからもうすぐ60年を迎えるところです。その間、社会的ニーズに応えるべく、作業療法士の数は飛躍的に伸び続けました。今後は量だけではなく、質の担保も重要な課題になり、自らの臨床実践にエビデンスの算出や説明責任を求められる時代になることが想定されます。EBOT(Evidence based Occupational Therapy)は、EBM(Evidence based medicine)に基づいた概念です。EBMとは「患者の価値観と行動」と「患者の病態と取り巻く環境」、そして疫学的手法を用いた「エビデンス」を統合し、患者にとって最も望ましい意思決定を提供しようとするものです。従来の経験主義や権威主義的な医療行為に代わる新しいパラダイムとして急速に普及し、医療を大きく発展させました。これらを基盤にしたEBOTは臨床効果を高める目的を持ち、クライエントの作業遂行要素、作業遂行、役割遂行の障害に関する臨床上の疑問点を明確にすることから始まり、「人―作業―環境」の側面を常に考慮しながらクライエントとの協働を強化するプロセスであると述べられています。
エビデンスは恒常的に正しいのではなく、医学の進歩、作業療法の発展、それらを取り巻く社会的環境により日々変化します。以前はエビデンスと成り得たものが、現在では標準的でなくなり、またその逆もあります。従って、「根拠に基づいた作業療法」を常に見直し、再考してアップデートする必要があります。またこれらの一連の作業を発展させるには、挑戦的な態度が重要になります。このことから、本学術大会のテーマを「根拠に基づいた作業療法(EBOT)の再考と挑戦」に決定しました。
本大会の目玉は、「根拠に基づいた作業療法(EBOT)の再考と挑戦」についての2つのシンポジウムであり、日頃からエビデンスに基づいたアプローチ(Evidence based practice)を実践されている各領域のスペシャリストから討論を頂きます。また、根拠に基づいた作業療法(EBOT)の実践に重要な知識や技術をアップデートするための教育講演を4演題、企画しています。さらに、特別講演、基調講演、ハンズオンセミナー、市民公開講座を予定しており、盛りだくさんの内容になっています。この学術大会を通して、皆様の日々の臨床活動を振り返り、さらに発展できる機会にして頂ければと思います。また、学生の皆様の参加は無料ですので、是非この機会に学術大会の雰囲気を味わって頂きたいと思います。 本大会は、現状のコロナ禍に鑑みて、対面とオンデマンド(一部、オンライン)のハイブリッド開催を予定しています。昨今のコロナ禍を経て、オンラインあるいはハイブリッドでの学術大会の開催が定着しつつあります。現地まで足を運ばなくても良いなど、オンラインやオンデマンド配信による学術大会の開催の利点は多々ありますが、人との偶然の出会い、演題との偶然の出会いが失われる弱点もあります。やはり、現地でのface to faceの学術大会、議論、交流、偶然の出会いや新しい発見が本来の学術大会に参加する良さと思っています。
是非、多くの皆様に会場まで足を運んで頂き、現地開催の醍醐味を存分に味わって頂ければ、幸いに存じます。