ご挨拶

第26回日本嗜癖行動学会札幌大会にあたって

このたび私たちは、第26回日本嗜癖行動学会札幌大会を、「闘う私のお友だち、それはアディクション! ~嗜癖と家族と暴力と~」をテーマに掲げ、2015年10月31日と11月1日の2日間、札幌コンベンションセンターにて開催することを計画しております。本大会は毎年一回、定期的に行われてきた日本嗜癖行動学会の学術集会です。

「嗜癖(アディクション)」とは、“身体に悪いとわかっていても止められない様々な物質や行為への耽溺”を言います。17世紀に登場したと言われるこの「嗜癖」概念は、18世紀後半から1960年代まで、物質(アルコールや薬物等)嗜癖に限定されており、ギャンブル依存症は「他のどこにも分類されない衝動制御の障害」に分類されていましたが、2013年5月に出版されたDSM–5(アメリカ精神医学会作成の「精神疾患の診断と統計のためのマニュアル第5版」)において「物質関連および嗜癖障害」というカテゴリーでまとめられました。

この変化は、ヒトは、精神作用物質だけでなく、ギャンブル、買い物、セックス、食べ物、インターネット、窃盗行為など、広い対象物や行動に非合理に耽溺することがあるという認識が社会に共有されるようになったことを背景にしています。

私たちはこのような嗜癖行為を、個人の弱さや家族の病理として捉えてしまいがちですが、“様々な生きづらさを抱えた時の生き延びるためのツールとしての嗜癖”とか“社会の病理に悲鳴を上げた私たちの、生き延びるためのとりあえずの手立てとしての嗜癖”といった捉え方をすると、これまでとは違ったアプローチができるのではないかと考え、「闘う私のお友だち、それはアディクション! ~嗜癖と家族と暴力と~」というやや刺激的なテーマを掲げてみました。

また、“生きづらさ”の背景にある暴力や虐待も避けては通れない課題です。良かれと思っての介入が、当事者や当事者の傍にいる人をさらに追い込んでしまうことがないようにするにはどうすればいいのか? そして、身体に悪いツールからより安全なツールへのシフトへの道筋をどうつけていくのか? などなど、本学会では、嗜癖問題に私たちがどう対応すべきかを皆様とともに考える機会としたいと思っております。

多様な実践が、そして支援し支援されることが、豊かな文化と生命讃歌に繋がれるように、様々な現場の声と知恵を聞かせてください。この大会への参加を呼び掛けます。

札幌でお会いしましょう。

大会長 早苗 麻子(萌クリニック 院長)