日本土壌肥料学会2016年度佐賀大会では、以下2件の公開シンポジウムを予定しています。
公開シンポジウム1
「堆肥の活用と土作りでまちづくり」
日時: 2016(平成28)年9月22日(木)10:00〜12:00
会場: 佐賀大学本庄キャンパスX会場
(教養教育大講義室)
主催: 一般社団法人日本土壌肥料学会
2016年度佐賀大会運営委員会
有機農業や低農薬栽培を望む国民の志向や、中高年のガーデニングの流行を背景に、堆肥を活用した土作りがプロからもアマチュアからも注目されている。一方、廃棄物の適正処分や資源化の観点からも、生ごみを分別・堆肥化し、地産地消や地域おこしに活用する自治体や市民団体も増えている。
しかし、良質の堆肥とはどのようなものか、どのように使うべきかなどについては、必ずしも十分に理解されていない面もある。篤農家が堆肥を連用して大切に育ててきた農地が、実はリン酸過多となって病弱な作物ができやすい状態になっていたという話は珍しくない。
そこで本シンポジウムでは、まず明治大学の藤原俊六郎先生から、堆肥の基本的な理論と実践を解説していただく。藤原先生は神奈川県農業総合研究所勤務当時から長年にわたって堆肥や有機質肥料を研究され、「図解 ベランダ・庭先でコンパクト堆肥」「堆肥のつくり方・使い方―原理から実際まで」「家庭でつくる生ごみ堆肥―よくある失敗防ぐポイント」などの解説書も数多く出されている。
ついで、NPO伊万里はちがめプランの福田俊明理事長からは、20年以上の同NPOの活動経験を紹介していただく。家庭の生ごみを独自に収集して堆肥化し、その「はちがめ堆肥」を協賛のレストランやホテルで販売し、農家にも販売して「はちがめ農産物」を作ってもらい直売所で販売することで、みごとに資源循環の環を実現している。
最後に染谷からは、学生食堂の生ごみで段ボールコンポストに取り組む学生たちや、「堆肥ボックス」で生ごみ堆肥化に取り組む市民の活動を紹介する。加えて、熊本県阿蘇地域で長年農家が自作してきた「野草堆肥」の驚くべき効果を紹介する。「野草堆肥」を連用しているハウス土壌では植物病害が少なく、野菜や花卉の数十年連作が実現している。その秘密を解き明かす研究を紹介し、熊本大震災からの復興に努力する阿蘇の人々にエールを送りたい。
司会: 山口純一郎(佐賀県農業試験研究センタ−有機・環境農業部長)
大塚 紀夫(佐賀県農業試験研究センタ−専門研究員)
- 10:00 あいさつ
- 染谷 孝(佐賀大会運営委員長、佐賀大学農学部教授)
- 10:05 基調講演
- 「堆肥の効果と使い方」
- 藤原俊六郎(明治大学特任教授)
- 11:05 講演
- 「生ごみは宝! はちがめプランの食資源循環活動」
- 福田俊明(NPO伊万里はちがめプラン理事長)
- 11:35 まとめにかえて「佐賀大学生・市民の堆肥作りと阿蘇の野草堆肥」
- 染谷 孝
- 11:50 質疑応答
- 12:00 閉会
公開シンポジウム2
「事故から5年―農業環境・農作物・農業経済の変遷と課題―」
日時: 2016(平成28)年9月22日(木)13:30〜16:40
会場: 佐賀大学本庄キャンパスX会場(教養教育大講義室)
主催: 一般社団法人日本土壌肥料学会
共催: 日本学術会議 農学委員会土壌科学分科会、農学委員会・食料科学委員会合同IUSS分科会
東京電力福島第一原子力発電所の事故によって福島県を中心とする農業は大きな打撃を受けた。事故から5年が経過し、農業環境において様々な放射性物質の低減化対策が検討され、農産物中濃度は基準値を充分に下回るようになった。本シンポジウムでは、5年間にわたり研究が進められてきた農業環境における低減化対策とその効果、農業環境における放射性物質の現状と将来予測、作物摂取による被ばく線量評価、更には原発事故がもたらした農業経済への波及と回復等についてこれまでに取り組んできた専門家に紹介頂き、土壌肥料学会員に広く周知するとともに、一般市民にも公開・普及する。また、今後の課題や営農再開に向けた取り組みなどについて議論する。
座長:中尾 淳(京都府立大学大学院生命環境科学研究科助教)
塚田祥文(福島大学環境放射能研究所副所長、教授)
- 13:30 開会あいさつ:
- 間藤 徹(日本学術会議連携会員、日本土壌肥料学会会長、京都大学大学院農学研究科教授)
- 13:35 「5年間における放射能汚染対策の概要と成果−農地の復興をめざして−」
- 信濃卓郎(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 農業放射線研究センター長)
- 14:05 「果樹における放射性セシウムの動態−果樹園の回復をめざして−」
- 佐藤 守(福島県農業総合センター果樹研究所栽培科専門員)
- 14:25 「水田における放射性セシウムの動態とモデル化−安全な稲をつくるために−」
- 江口定夫(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
物質循環研究領域水質影響評価ユニット長) - 14:45 「農耕地土壌における放射性セシウムの動態にかかわる有機物の役割
−有機物の意外な効果−」 - 山口紀子(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
有害化学物質研究領域無機化学物質ユニット上級研究員) - 14:55 「森林環境における放射性セシウムの分布と挙動−森林・林業の復興にむけての課題−」
- 金子真司(国立研究開発法人森林総合研究所 立地環境研究領域長)
- 15:15 「福島県における農作物中放射性セシウムとストロンチウム
-90濃度および作物摂取による被ばく 線量評価−福島県農作物の現状−」 - 塚田祥文(福島大学環境放射能研究所副所長、教授)
- 15:35 「原発事故がもたらした農村農業への影響と5 年間の総括
−現地の取り組みと復興のいま−」 - 小山良太(福島大学経済経営学類国際地域経済専攻教授)
- 16:05 総合討論
- コメンテーター:
- 万福裕造 (国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
生産体系研究領域バイオマス 利用グループ主任研究員)
齋藤雅典 (東北大学大学院農学研究科教授)
齋藤 隆 (福島県農業総合センター浜地域農業再生研究センター技術研究科主任研究員)
南條正巳 (日本学術会議会員、東北大学大学院農学研究科教授)
木村 武 (全国農業協同組合連合会肥料農薬部技術対策課技術主管) - 16:40 閉会