大会長あいさつ

生きる力に寄り添うソーシャルワーク~現在・過去・未来~

大会長 (新潟県医療ソーシャルワーカー協会)
坂詰 明広

 臨床医のウイリアムオスラー博士は、大哲学者ゲーテの言葉を常に胸に抱いて、医療を行っていたといいます。
 「ある人の今持っている、最も優れたものは先人に負っている」
 この有名な言葉をふまえ、1966年から始まり、第63回京都大会までバトンを引き継いで来られた全国の熱い医療ソーシャルワーカー(以下MSW)に改めて敬意を表したいと思います。
 第64回新潟大会は、平成24年に北信越5県(富山県 石川県 福井県 長野県 新潟県)で開催した「北信越医療ソーシャルワーク研究会in新潟」を発展させたテーマとなっています。故に、新潟県で開催される意味あいは北信越5県のMSWたちのチームワークを発揮する場となると考えます。
 一昔と比べると、MSWの配置は進みました。クライエントの退院支援に邁進するあまり、支援の本質である援助関係の形成の技術や、理論の振り返りなど学問としての”ソーシャル”の意味を理解し、実践できているのか時々不安が募ることもあります。また、忙しさのあまり足元しか見ずに、地域、連携の言葉が置き去りにされている感もあります。
 我々MSWの現在のMissionは何か?そしてあるべき未来のMSWのあり方に向かって過去を振り返り、クライエントへ寄り添う支援、現在-過去-未来の順番にMSWの立ち位置を確認できる大会にしたいと考えます。
 64回目のバトンを新潟で受け継ぐ意味は、新潟県医療ソーシャルワーカー協会創立60周年を記念し、新潟のソーシャルワークの原点を確認すること、また京都大会から受け継ぐ意志は日本の神経解剖学に大きな足跡を残し、京大総長も務められた新潟県旧味方村出身の碩学 平澤 興先生の言葉を借りて述べたいと思います。

論語の一節である『学は及ばざるが如くして 猶お之を失わんことを恐れる』

 先生は言葉を求められると必ず書かれていたそうです。学問をするには、追っても追っても追いつくことが出来ないものに追いつこうとするように絶えず休みなく努めて、猶お之を見失って追いつくことができなくなるのではないか、と恐れるような気持ちで勉強しなければならないという意味です。
 平澤先生がおっしゃる『物事は粗末に見てはいけない。何事もうんと深く見なければいけない』という言葉は、『クライエントの言葉に耳をうんと傾けて聴いていますか』に置き換えられると考えます。
 新潟で善き師、善き仲間に出会い、参加者がこの新潟大会に参画し『感奮興起』の言葉通りソーシャルワーク道を求め、ソーシャルワーク実践が、未来に向けてクライエントの生きる力に寄り添えるに堪えるものなのか、を改めて確認する機会にしたいと考えます。