ラウンドテーブルセッション

日本薬剤学会第29年会では、5つのラウンドテーブルセッションを実施いたします。ラウンドテーブルセッションとは、“ラウンドテーブル(円卓)”に象徴されるように、互いが平等で自由闊達に忌憚ない意見を交換することを特徴とするセッションです。直面している問題や新しい研究課題をテーマに、当該分野の専門家のみならず関心を持つ研究者が一堂に参集し、ディスカッションを通じて問題解決のための方策や新しいサイエンスの研究戦略を見出すことを目的としています。

ラウンドテーブルセッション 1 Roundtable Session 1

「薬物動態の数理モデル解析の意義・可能性、そして限界」

オーガナイザー:千葉 康司(横浜薬科大学薬学部)
前田和哉(東京大学薬学部)

各極の薬物間相互作用ガイダンスにおいては、数理モデル(PBPKモデル)を用いた解析がdecision makingに利用可能であることが明記されている、さらに、米国FDAにおいては、実際に、PBPKモデルの利用により、臨床薬物相互作用試験を免除された例が論文上でも報告されている。このような状況下で、薬物動態の数理モデルを用いた予測は、確実に注目を集めている。しかしながら、実際の運用にあたっては、in vitro実験から得られたパラメータをそのままスケールアップしてモデルパラメータとしてよいかといったパラメータ設定の問題やモデルのバリデーションの問題があり、積極的な利用に結びつかない現状がある。本セッションでは、数理モデル解析の事例の紹介を議論のきっかけとして、数理モデル解析が創薬の現場で活用されるために、どのような障壁があり、どう克服可能か?について、産学の間で今後の展望を語る場としたい。

「非臨床データを用いた薬物動態の数理モデル解析と創薬への活用」
三日市 剛(第一三共(株))
「トランスポーターを介した薬物間相互作用のモデリング事例」
吉門 崇(理化学研究所)
「臨床データを用いたPhysiological based pharmacokinetic(PBPK)モデル解析の事例紹介と母集団薬物動態解析との比較,融合の可能性」
大石 昌代(ファイザー(株))

ラウンドテーブルセッション 2 Roundtable Session 2

「薬物治療の最適化を目指す未来型コントロールドリリース」

オーガナイザー:佐久間 信至(摂南大学薬学部)
山本 浩充(愛知学院大学薬学部)

コントロールドリリースは、製剤からの薬物放出プロファイルを制御することにより、作用部位での最適な濃度―時間プロファイルを実現するDDSである。実用化が最も進んでいるDDSであり、局所作用から全身作用まで、さまざまな部位に適用する製剤が開発されている。既存のコントロールドリリース技術の完成度が高いことから、大学の製剤研究者は物作り的な好奇心を失いがちであるが、企業の開発現場におけるコントロールドリリース技術への期待は依然として高い。コントロールドリリース技術が導く体内動態の安定化が薬物治療にもたらすインパクトは、今もさまざまな疾患で証明され、同技術の臨床的価値はさらに高まっている。本ラウンドテーブルでは、近年上市されたコントロールドリリース製剤を中心に、それらの製剤が適応疾患の薬物治療にどのような変革をもたらしたかを考察し、コントロールドリリース技術の今後の方向性を議論したい。

「現在の医療を支えるコントロールドリリース技術」
小口 敏夫(山梨大学医学部附属病院)
「がん性疼痛領域におけるCR製剤とその有用性」
服部 政治(がん研有明病院)
「精神疾患治療のための薬剤の役割‐服薬アドヒアランスを向上するための工夫‐」
中村 純(産業医科大学医学部)

ラウンドテーブルセッション 3 Roundtable Session 3

「PLCM −製剤設計から医療現場まで−」

オーガナイザー:砂田 久一(名城大学薬学部)
竹内 洋文(岐阜薬科大学薬学部)

PLCM(product life cycle management)に関する認識は、医薬品製剤を中心とした研究者、開発者、医療関係者の間で深まり、定着している。例えば、口腔内崩壊錠については、様々な研究がなされ、苦味マスキング等の患者サイドの要求も組み入れたより完璧な製剤設計へと進化し続けている。また、小児用製剤開発への関心も高まっている。本ラウンドテーブルでは、PLCMに関する認識を共通のものとすると共に、医療現場からの声も反映させたより良い製剤開発に繋げる討論の場としたい。講演者には、製剤設計、医療現場の両面からマルチな情報提供をいただき、様々な観点からの意見交換をして、今後の我が国のPLCM製品開発に寄与したいと考える。

「クスリ新時代を拓いた口腔内崩壊錠 ―普遍化への道―」
増田 義典(耕薬研究所)
「PLCMと小児用製剤開発」
岩本 清エーザイ(株)
「PLCM-製剤設計から医療現場までーOD錠に求められる臨床的機能性」
並木 徳之(静岡県立大学)

ラウンドテーブルセッション 4 Roundtable Session 4

「創薬に寄与する塩・共結晶研究 〜スクリーニングから戦略的価値創造へ〜」

オーガナイザー:深水 啓朗(日本大学薬学部)
池田 幸弘(武田薬品工業(株))

従来から原薬フリー体の結晶化が困難な場合等に塩形成が行われてきた。近年では物性的な利点を有する新規な塩あるいは共結晶について、より積極的に探索・創出する機運が高まっている。そこで本ラウンドテーブルセッションでは,それら新原薬の開発過程で課題となる,新たな結晶形の探索,選別および製剤化における方法論や留意点,あるいはカウンターパートとして用いる添加剤の安全性等について討論する。また、製品ライフサイクルマネジメントの観点から、特許性の有無や将来的な展望について情報を共有する機会を設ける。ケーススタディや最新の話題提供を講演プログラムに盛り込むことで、企業間の枠を超えた議論を促し、原薬開発におけるボトルネックの解消あるいは申請までのスピードアップに貢献することを目的とする。

「塩原薬選択の現状分析について」
小野 誠(第一三共(株))
「塩から共結晶,そして,次のステージへ」
山下 博之(アステラス製薬(株))

ラウンドテーブルセッション 5 Roundtable Session 5

「小児のための製品価値最大化」

オーガナイザー:金 淳二(小野薬品工業(株))
原田 努(バイオジェン・アイデック・ジャパン(株))

未充足の臨床ニーズがあるにも関わらず、経済的なメリットや規制面での制約、情報ネットワークの未整備などによって現在十分な取り組みが行われていない小児を対象とした製剤開発について、医療機関の先生による現状を紹介していただき、フロアからは患者さんの保護者や企業研究者および大学研究者も参加して議論することによって、課題を共有し、解決策を模索する機会とする。

「薬剤に対する子どもと家族の思いや小児医療現場における現状」
原田 香奈(東邦大学医療センター大森病院)
「小児用製剤の必要性と日本薬剤学会PVMフォーカスグループへの期待」
石川 洋一(国立成育医療研究センター)

ページの先頭へ

Copyright © The Academy of Pharmaceutical Science and Technology, Japan All Rights Reserved.