中国とフランスの影響を受けて発達したベトナム料理は、他の東南アジア料理のように辛すぎず、甘すぎない繊細な味が東南アジア料理の中でも比較的日本人に合うとされていて、日本でも定番となってきました。新鮮なシーフードや野菜、種類豊富なハーブなどを使ったヘルシーなメニューも数多くあります。南北に細長い国土のため、訪れる地域によって異なる味を楽しむことができます。今回は、そんなベトナム料理のなかでもおすすめのグルメをご紹介いたします。
ベトナムを代表する国民的料理「フォー」
「フォー」はベトナム人にとってソウルフードであり、1日3食をフォーで済ませる人もいるほど生活に密着している料理です。原材料は米粉と水で、水に漬けた米粉をペースト状にして金属板の上で熱したものを平らな麺の形状にします。フォーは、屋台からレストラン、ホテルの朝食などあらゆるところで食べることができますが、一般家庭で食べることは少なく、外食がメインとなっています。温かいスープの中に麺を入れて、鳥、豚、牛の肉を乗せて、香草を散らすのが一般的で、自分で唐辛子やバジルなどの香草をトッピングして、好みの味にして食べます。基本のスープは鶏ガラベースの透明なスープで、ヌクマム(魚醤)や香辛料で味付けされていたり、牛骨スープが使われていることもあります。鶏肉を乗せたものを「フォー・ガー」、牛肉を乗せたものを「フォー・ボー」といいます。
さまざまな楽しみ方があるメニュー「春巻き」
ベトナムで地元の人から愛されるメニューが春巻きです。日本で春巻きというと小麦粉の皮で作った揚げ春巻きが一般的ですが、ベトナムの春巻きは米から作られているライスペーパーが使用されていて、生春巻き(ゴイクォン)、揚げ春巻き(ネムザン/チャーゾー)、蒸し春巻き(バイン・クォン)があります。日本でも定番となってきた生春巻きは、ライスペーパーで海老やサニーレタス、キュウリなどを巻くのが一般的です。お好みで大葉やネギ、ニラ、などを加えて、チリソースやヌクマム(魚醬)をつけて食べます。揚げ春巻きは、豚ひき肉がメインで、北部ではきくらげや春雨、もやし、人参などを使用したさっぱりとした味わい、南部では海老やカニのほぐし身などを入れてボリューム満点な味わいとなっています。蒸し春巻きは生春巻きとよく似ていて、入れる具材はほとんど変わりませんが、蒸しているためライスペーパーがプルプルとした食感になっています。他にも、春巻きの皮が網目のようになっている網春巻き(ウェブクォン)やからし菜で具材を包むクオンジェップというものもあります。
ベトナムの定番ファストフード「バインミー」
近年、日本でも人気が高まってきているベトナムのローカルフードが「バインミー」です。フランス植民地時代の影響を強く受けているメニューの一つで、フランスパンに具材を挟んだサンドウィッチのことを指します。ベトナムには至るところにバインミーの屋台があり、どこでも買うことができる手軽なファストフードです。外はサクッとして、中はもっちりとした軽い食感のフランスパンを使用していて、切れ込みを入れたパンに肉のパテを塗ったり、ハム・パクチー・玉ねぎ・人参・キュウリ・大根・なますなどを挟み、最後にヌクマム(魚醬)をかけます。お店によってパンに挟まれている具材が異なるので、色々なお店のメニューを試してみるのもおすすめです。
ベトナム南部の定番屋台料理「バインセオ」
「バインセオ」とは、主にベトナム南部で食べられているベトナム風のお好み焼きです。見た目の色合いからオムレツや卵焼きを想像しますが、この黄色はターメリックの色です。日本のお好み焼きに比べて、皮が薄くてパリパリとしていて、ほんのりとココナッツミルクの香りがします。米粉の皮の生地に海老や豚肉、もやしなどをたっぷりと乗せて焼き上げて、サニーレタスやハーブなどを包んで、タレを付けて食べるのがベトナム風です。タレは、ナンプラーやヌクマムといった魚醬をベースに酢や砂糖、レモン汁を加えて作るものやスイートチリソースなどを使用します。
街の至る所で見つけることができる地元の定番料理「コムタム」
「コムタム」とはベトナム語で“砕け米”を意味していて、3分の1程度に砕けた白米を半熟の目玉焼きや大根、豚肉をヌクマム(魚醤)で味付けして、グリルしたものを一緒に食べるスタイルのストリートフードです。とてもシンプルな料理ですが、街の至る所で「com tam」という看板を見つけることができ、地元の人々にとって定番のメニューとなっています。ベトナム戦争終結後の1980年代、食糧難にあったベトナムで、もみすりの際に出てくる小さく砕けた米粒を調理したのがきっかけで、ベトナムの歴史とも深く結びついた料理です。
ベトナム南部発祥の麺料理「フーティウ」
ベトナム南部のメコンデルタ地方発祥の麺料理が「フーティウ」です。元を辿れば、カンボジアから伝わったとされています。豚骨ベースで甘めのクリアなスープに麺を入れ、海老・豚肉・ひき肉・レバーなどの具をのせ、生のもやし・春菊・レタス・ニラなどを付け合わせとして添えて食べます。主にベトナム北部で食べられているフォーに比べて、コシと弾力があります。フーティウを扱う食堂のなかには「フーティウ・コー」という料理もあります。こちらは「コー(Kho)」=「乾いた」という意味で、スープ無しのメニューとなっていて、普通のフーティウよりも濃厚な味付けとなっており、日本の焼きそばのような料理です。
ハノイ発祥の麺料理「ブンチャー」
ベトナム北部の都市ハノイの名物麺料理が「ブンチャー」です。ベトナム料理の定番であるフォーと同じく米麺を使っていますが、麺をスープにつけて食べるスタイルの麺料理です。ブンチャーのつけダレは辛味・酸味・甘みを感じられる味付けとなっていて、具材は炭火で焼いた豚肉や肉団子、揚げ春巻き、かき揚げなどが入っています。付け合わせとしてレタスや青野菜、ミント・紫蘇・バジルなどのハーブ類も一緒に添えられていることが多いですが、お店によって少しずつ異なります。お好みで、刻んだショウガや赤唐辛子などを入れて食べます。フォーとは違い、平麵ではなく、そうめんのような極細の麺を使用しているのも特徴です。
野菜たっぷりのベトナム和え麺「ブンティッヌン」
「ブン」は米粉を原料とした押し出し麺で、フォーに並ぶベトナムの国民食です。さまざまな調理法で使用されているのが特徴で、生春巻きの具などにも使用されています。「ティッ・ヌン」とは“焼肉”という意味で、「ブンティッヌン」は焼肉が具材になった麵料理となります。本場では、豚の焼肉やチャーシューのようなものに、レタス、パクチー、ニラ、ナッツなどの具材をのせて、そこにヌクマム(魚醬)ベースのタレをかけて、全体を混ぜながら食べます。生野菜もたくさん入っているので、サラダ感覚で食べることができます。ヌクマムとは、カタクチイワシに似た小さな魚の塩漬けを熟成させた日本の”しょっつる”のようなものです。ブンティッヌンは、このヌクマムにライム汁、砂糖、ニンニク、唐辛子などを入れたヌクチャムというソースが味の決め手となります。
ヘルシーなベトナム風サラダ「ゴイガー」
「ゴイガー」は千切りキャベツや人参、スライスした赤玉ねぎなどの野菜に蒸した鶏肉をトッピングしたシンプルなエスニック風サラダです。ベトナム語で「ゴイ」とはサラダや和え物を表していて、野菜料理が多いベトナム料理では「ゴイ」が付く料理がたくさんあります。ドレッシングはベトナム定番のヌクマム(魚醬)にライム汁や砂糖などを加え、ピーナッツやフライドオニオンなどを乗せることもあります。お店によっては、唐辛子を使用したピリ辛な味付けのものもあります。
ベトナム独自のデザート感覚のコーヒー「ベトナムコーヒー」
実は、ベトナムは世界2位のコーヒー豆の生産量を誇ります。19世紀のフランスの植民地時代に、フランス人からコーヒーが持ち込まれて豆の栽培が始まりました。ベトナムで生産されているコーヒー豆のほとんどは苦みの強いロブスタ種という種類の豆なので、練乳を加えて飲むのが一般的です。ベトナムでは新鮮な牛乳が手に入りにくく、練乳なら保存がきくため牛乳の代わりに入れられるようになったとも言われています。ベトナムコーヒーの抽出方法も独特で、アルミやステンレス製のコーヒーフィルターであるカフェ・フィンを使用します。コーヒー1杯につき1つのカフェ・フィンを用意して、一滴一滴じっくりと時間をかけてコーヒーを抽出します。また、ベトナムは熱帯地域に属していて、一年中温かい気温であるため、地元の人々の多くは冷たいコーヒーを好んで飲んでいます。
ベトナムのご当地デザート「チェー」
ベトナムのローカルスイーツの定番が「チェー」です。さまざまな種類のものがあるので定義するのは難しいですが、甘い豆が入っているケースが多いことから「ベトナム風ぜんざい」と呼ばれることもあります。もとは遠方から訪れたお客様をもてなすために、その土地でとれた天然素材を使ってデザートを作ったことが始まりとされていて、今では手軽なおやつとして日常的に食べられるようになり、路上の屋台や市場の食堂街などでも売られています。具材は、豆類のほか、タピオカやゼリー、寒天、サツマイモ、フルーツなどさまざまで、ココナッツミルクや牛乳を使って、甘く仕上げられています。専門店では店頭にカラフルな具材が並び、グラスに入ったサンプル、もしくはメニューを見て注文することが多いですが、お店によっては、好きな具材を合わせてオリジナルのチェーを作ることもできます。ホーチミンでは、氷を入れた冷たいチェーが一般的ですが、北部のハノイなどでは温かいチェーもよく食べられていて、優しい味で冬のデザートとしても楽しまれています。
いかがでしたでしょうか。
ベトナムには、地域によってさまざまな料理がございます。ベトナムにご旅行に行かれる際は、この記事を参考に現地でしか味わうことができないグルメをお楽しみください。
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