北アルプスや美ヶ原高原など、雄大な自然に囲まれている長野県松本市。自然が楽しめるのはもちろん、松本城の城下町として約400年栄え続けてきた歴史も持つため、貴重な史跡も数多く存在しています。ぜひ松本に訪れる前に、チェックしておきましょう。
国宝 松本城
戦国時代と江戸時代の意識の違いが構造に現れた「松本城」
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城
松本城は1504年築城といわれる深志城を祖とする平城です。白漆喰と黒漆で塗り分けた二色の外壁が特徴で、現存12天守、国宝5城のひとつに数えられています。国宝に指定されたのは1593年~1594年に普請された5重6階・望楼型の大天守と乾小天守と渡櫓、江戸時代に増設された辰巳附櫓と月見櫓の5棟です。戦国期の櫓には狭間や石落などの迎撃設備が存在しますが、泰平の世である江戸期の櫓には見られません。時代の遷移が構造に現れている点が松本城の見所のひとつと言えるでしょう。また、内部には鉄砲や具足、二の丸御殿跡の出土品などが展示されています。城を眺めたいなら、松本市役所展望室に登ってみましょう。とっておきの穴場です。
縄手通り商店街
歩行者天国でもあり、カエル天国でもある「縄手通り商店街」
長屋のような商店が軒を連ねる縄手通り商店街。ここはカエルを愛する者たちの聖地として有名です。通りの東西にはカエルをモチーフとしたマスコット像が設置されていて、ここがカエルの商店街であることを雄弁に語っています。また、「かえるのお店 RiBBiT」も見逃せません。こちらはレアなカエルグッズを求めて遠方から訪ねる人もいるほどの人気店。訪れた際には是非、覗いてみましょう。通りの中程には蛙大明神という聖域も存在します。2020年は中止となりましたが、毎年6月に開催される奇祭「松本かえるまつり」に合わせて、蛙大明神に因んだ御朱印が配布されるのが通例となっています。カエル好きなら是非とも手に入れたいところですね。
松本市立考古博物館
原始・古代の文化を体験できる「松本市立考古博物館」
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美術館・博物館
松本市南東部の中山地区周辺は縄文時代の遺跡や古墳の宝庫です。松本市立考古博物館には、古墳時代前期の弘法山古墳出土品(鏡や玉)、縄文時代後期のエリ穴遺跡出土品(耳飾り)など、県宝指定された貴重な遺物が常設展示されています。原始や古代の生活を体験できる常設イベントも豊富で、定番の「火おこし」や「勾玉づくり」、「弓矢飛ばし」などを楽しむことができます。また、こちらは年に数回のイベントとなってしまいますが、工作に半日を要する「弓矢づくり」、作業開始から完成まで1か月を要する「土器づくり」なども用意されています。特に「土器づくり」は成形から乾燥、野焼きまで実践する本格的なもの。この体験は一生の思い出になるはず。
国宝旧開智学校校舎
明治擬洋風建築を代表する国宝「旧開智学校校舎」
旧開智学校は、明治9年竣工の小学校の校舎です。のちに旧松本区裁判所庁舎などを手掛ける地元の大工棟梁・立石清重が設計・施工しました。明治初期に顕著な和洋折衷のデザインで、「擬洋風建築」の代表とされています。特に正面玄関前の車寄せは青龍、雲、看板を抱えた二人の天使、八角塔屋など擬洋風の極みとも呼べる意匠になっています。令和元年には開化期の洋風建築受容の様子を示し、近代教育の黎明期を象徴する貴重な建築物と認められ、近代学校建築として初めて国宝に指定されました。内部は教育博物館になっていて、江戸時代から現代までの貴重な資料が展示されています。令和3年6月から3年間に及ぶ耐震工事が予定されているので、駆け込むなら今。
松本市美術館
草間彌生など、松本市出身の芸術家の作品を数多く収蔵展示する「松本市美術館」
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美術館・博物館
松本市美術館は「心をひらく学びの森の美術館」として、鑑賞、表現、学習、交流の場を4つの柱に、地域に根ざした総合美術館です。テーマに沿った収蔵品を展示するコレクション展示では、前衛芸術家・草間彌生、彫刻家・細川宗英、書家・上條信山など、松本市ゆかりのアーティストの作品をじっくりと鑑賞することができます。また、企画展も例年4回ほど開催されています。なお、改修工事による約1年の休館を終え、2022年4月21日リニューアルオープンします。
あがたの森公園
大正浪漫の趣を残した市民の憩いの場「あがたの森公園」
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公園
あがたの森公園はヒマラヤ杉に囲まれた公園です。広場や遊具を備え、親子連れの姿もちらほら。池には鯉や亀が棲んでいて、長閑な時間を過ごせます。春には淡紅色の桜、秋には山吹色の銀杏や弁柄色の楓を楽しめる景勝地としても有名です。「クラフトフェアまつもと」や「ランドネピクニック」の会場としても使用され、シーズンには多くの参加者で盛り上がります。また、園内にある「旧松本高等学校」は重要文化財に指定された大正時代の木造洋風建築。現在は「あがたの森文化会館」として機能しています。朝ドラのロケ地にもなりました。平成30年から約6年規模の耐震工事が行われているので、訪問前に利用状況の確認をお忘れなく。
四柱神社
巨大な鳥居が目印! 全ての願いが相叶う「四柱神社」
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神社仏閣
女鳥羽川沿いの四柱神社は天之御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神、天照大神の四柱を祀る神社です。四柱の神がもたらす「願いごとむすび」は「全ての願いが相叶う」という非常に有難いもの。明治12年の建立以来、女鳥羽川の土手は四柱神社の参道として大いに賑わったそうです。縄手通り商店街から直接、境内に向かうこともできるので、「むすびの神様」の御縁を求めてお参りをしていく観光客も多いそう。また、入口に掛かっている御幸橋は明治天皇が渡り初めをされたことから、現在では聖蹟として扱われています。
松本市アルプス公園
自然に囲まれた総合レクリエーション施設「松本市アルプス公園」
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公園
松本市アルプス公園は松本市街地の北西部、標高800mの丘陵にある都市公園です。西には雄大な北アルプスこと飛騨山脈に安曇野、東には美ヶ原や市街地が広がっています。71ヘクタールの広大な敷地内は自然が豊かなので、四季折々の色彩を楽しみながら散歩をすれば、日頃の疲れを忘れられることでしょう。また、園内には約50種の動物を飼育する「小鳥と小動物の森」、松本の自然を学べる「山と自然博物館」など様々な施設が点在しています。博物館5階の無料展望室からは、360度の展望が楽しめます。お子さまには遊具が密集する「子供冒険広場」、林間のコースをソリで滑走する「アルプスドリームコースター」がおすすめです。
松本民芸館(松本市立博物館分館)
柳宗悦の民芸運動に共鳴して建てられた民衆的工藝品の展示施設「松本民芸館」
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美術館・博物館
松本民芸館は「ちきりや工芸店」の初代・丸山太郎が創設した資料館で、昭和58年に松本市に寄贈されました。柳宗悦の民芸運動(無名の職人が作った日用品に本当の美があると訴えた)に共鳴して建てられた施設で、丸山が収集した民衆的工藝品が展示されています。謂れなど関係なく「美しいものが美しい」という丸山の思想に基づいて、解説が大胆に省かれているのも特徴です。展示品は箪笥や行李(葛籠の一種)、陶器や磁器など幅広く、なかには海外で作られた物も。コレクションを見ているうちに、華美な装飾ではなく「用の美」を愛した丸山の気持ちが理解できるかもしれません。現在「ちきりや工芸店」は丸山の家族が引き継ぎ、中町通りで営業しています。
中町通り
大火がきっかけで生み出された、なまこ壁の土蔵が建ち並ぶ「中町通り」
中町通りは、なまこ壁の建物が多いことで有名です。このなまこ壁は、実は明治21年に発生した大火の産物。商品を焼かれた商人たちが建てたのが、防火性に優れた、なまこ壁の土蔵なのです。当時の蔵は中町商店街として発展を遂げた現在でも、至る所に形を残しています。また、近年に建てられた建物も、なまこ壁を再現して景観の維持に努めているそうですよ。通りのシンボルとなっている中町・蔵シック館は特に歴史が長く、母屋と蔵は明治21年、離れは大正12年に建築されました。母屋の土間は上部が吹き抜け構造で、見事な梁組を見ることができます。また、蔵には築約140年のカフェとも言える茶房があるので、こちらにも寄ってみてください。
馬場家住宅
メキシコ革命で多くの日本人を救った知られざる英雄・馬場称徳の生家「馬場家住宅」
重要文化財「馬場家住宅」は武田家三代に仕えた重臣・馬場信春の遠戚の住宅です。第15代当主・馬場称徳はメキシコ革命で多くの日本人移民の命を救った人物で、小説の主人公のモデルになりました。住宅は松本市南東部の高台に位置し、眼下に広がるは松本平。主屋の建築は1851年で、典型的な本棟造りです。雀おどしや釘隠しなど、随所に匠の業が光ります。表門も立派で、上部にはしゃちほこの姿が確認できます。また、祝殿の裏には推定樹齢800年、松本市特別天然記念物に指定されている欅があります。ちなみに名称に「旧」が付いていないのは、現在でも敷地の半分を馬場家が所有しているからです。そのため、一部の施設は非公開となっています。
湯々庵 枇杷の湯
松本城主・石川氏が愛した歴史ある湯殿「湯々庵 枇杷の湯」
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温泉
松本市の浅間温泉は開湯・698年(飛鳥時代)、約1300年以上の歴史ある名湯です。湯々庵 枇杷の湯は初代松本城主・石川数正が造営した湯御殿がルーツ。以来、城主が通うようになり、浅間温泉は「松本の奥座敷」と呼ばれるようになりました。館内には裃や籠など、当時の資料が展示されているので、歴史好きは必見です。また、庭には築城を引き継いだ二代目の松本城主・石川康長お手植えの松があり、枇杷の湯400年の歴史が感じられます。湯殿は大きく分けて二つ。離れにある「お殿様の野天風呂」は四季折々の自然を楽しむことができて、特におすすめです。泡の出る湯船を備えた大浴場には桧露天風呂、サウナ、水風呂が用意されています。
松本市時計博物館
建物と一体化した超巨大振り子型時計が目印の「松本市時計博物館」
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美術館・博物館
松本市時計博物館は11mの振り子型時計がシンボルの博物館です。展示されている時計は約110点。特に古時計のコレクションは国内有数と評されています。常設展「時計の進化」では時計の移り変わりを、実物を見ながら学ぶことができます。日時計から始まった時計が複雑化していく様子は、人類の技術の発展を見ているようで、感動的ですらあります。同じく常設の「華麗なる古時計の世界」には干支が用いられた和時計、『大きな古時計』を彷彿とさせる約2.3m超のグランドファーザー・クロックなど、様々な展示品があります。動いている物も多いので、外見だけでなくカチコチと時を刻む針の音、ブーーンブーーンと響く鐘の音も含めてご堪能ください。
約400年の歴史を誇る城下町である松本市には、松本城や旧開智学校など貴重な建物が点在しています。日本アルプスの雄大な山脈をバックに、松本の観光スポットめぐりをしてみませんか。
※2020年12月1日時点の情報です。
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